もっと、地域にクラシック音楽を
― Chapter 3 ―
もっと、地域にクラシック音楽を
鈴木さん
私は、大阪の女子大学で、講義という形で定期的にピアノの実演を行っています。以前はあまりそうしたことはなかったと思うのですが、クラシック音楽の世界でも地域貢献的な活動がさかんになってきていますね。
田中さん
大阪フィルも、大阪府主催のイベントに出演したり、その他にもさまざまな催しに参加する機会がよくあります。最近は、公共的な場で演奏することが増えてきていると思います。
鈴木さん
私は、普段コンサートに行くことができない患者さんのために、よく病院のロビーなどで演奏することがあります。患者さんが微笑んでおられる姿を拝見したりすると、こちらまで心が和みます。
上村名誉教授
最近は、病院やホテルのロビーなどでの演奏も多くなってきています。確か、東京駅などでもちょっとした演奏会をコンコースなどで行っていました。確かに、ホールだけでなく公共の場でクラシック音楽を聴く機会が随分増えました。最近は、大学も地域との連携なしには成り立たなくなっています。そういう意味でも、グリーンフェスティバルが果たす役割は、ますます重要になってくるのではないでしょうか。ただ、開催するからには、お客さまに喜んでいただけるようなプログラムを提供しなければなりません。人気のある楽曲を主体に、あまり知られていない作曲家の楽曲まで演目に加えるなど、さまざまな試行錯誤をしてきました。おかげさまで、今まで聴衆の数が半分にも満たなかったことはありませんでしたので、一定の評価はいただいているのではないでしょうか。個人的には、仕事を持っておられる方、特に働き盛りの男性の方にぜひ来ていただき、クラシック音楽に触れていただきたい。そして、もっと多くの方に見にきていただきたいと思っています。そのためには、どうすればよいか。プログラム内容や宣伝方法を含めて改めて考えていく必要があるでしょう。
田中さん
先生もおっしゃっておられましたが、生の演奏はCDなどとは違う魅力があります。ヴァイオリンやピアノの演奏曲には歌詞はございませんが、音色で感情を伝えることができる音楽だと思います。そうした感情の動きを感じていただくためにも、演奏家としては、やはり生で聞いていただきたい。グリーンフェスティバルには、オープンな気持ちでクラシック音楽の演奏を聞いていただける気さくな雰囲気があるので、ぜひ続けていただきたいと思います。
鈴木さん
私は、クラシック音楽の演奏会に、お子さまを含めた若い層の方にぜひ来ていただきたいと考えています。今、クラシックを題材にしたコミックが流行っていますが、リクエストがあればそのなかで登場する楽曲も演奏します。そうした努力をして、クラシック音楽を次の世代に引き継ぐ若いファンを開拓していきたいと思っています。
上村名誉教授
私は、グリーンフェスティバルの主催者の一員になって、はっきりと認識したことがあります。演奏家が、お客さまに対してご自分のベストの状態で演奏を披露するためにどれだけの努力を重ねているか、ということです。このような真摯な姿を拝見させていただいたおかげで、より演奏家を尊重する気持ちを持つことができるようになりました。この経験によって、素晴らしい財産を得たと感じています。演奏家の想いがつまったクラシック音楽の魅力を、今後もグリーンフェスティバルで伝えていきたいです。
Profile
上村 嘉夫
慶応義塾大学大学院文学研究科英文学専攻修士課程修了
1976.4~2008.3 神戸学院大学人文学部教育職員
専門分野「英国エリザベス朝演劇」「西洋古典音楽」
2008.4~神戸学院大学名誉教授
田中 美奈
桐朋学園大学音楽学部卒業。桐朋オーケストラ・アカデミー研修課程修了後、ヨーロッパ各地で演奏。大阪フィルハーモニー交響楽団第2ヴァイオリン首席奏者に就任し、現在に至る。
鈴木 華重子
京都市立芸術大学卒業。インディアナ大学にてパフォーマー・ディプロマ並びにアーティスト・ディプロマ修了。在学中より学内外でソロ、室内楽、協奏曲等の演奏会に出演。